2023
BASE,Taito-ku,Tokyo,Japan
Exhibition
Exhibitor:KASA(Aleksandra Kovalev,Kei Sato),Ryosuke Yuasa
Organizer:+BASE(Hiroyuki Unemori・Chie Konno)
Documentation:Yukasa Narisada
Photo:Tomoyuki Kusunose
Drawing:Ryosuke Yuasa
Project:PALACE

■展覧会概要

展覧会タイトル:In Between Two Houses/Dialogue vol.2 KASA・YUASA
会期:2023年3月23日(木)~2023年4月2日(日)
開催時間:11:00-17:00
休廊日:なし
会場:BASE(東京都台東区浅草橋3-12-6)
入場料:無料
出展作家:KASA(アレクサンドラ・コヴァレヴァ / 佐藤敬)・湯浅良介
主催:+BASE(畝森泰行・金野千恵)
ドキュメンテーション・宣伝美術:成定 由香沙

■作品概要

KASA

PROJECT NAME:ふるさとの家 / LOCATION : Kuwana,Mie / SITE AREA : 500㎡
父の実家が玉突き式の区画整理で一時立退を余儀なくされた。整備済の宅地から順にぽつりぽつりと住宅が建ち並び、商業地域とは思えない茫漠な光景が広がっている。敷地はそんな駅前通り沿いにある。街の賑わいを感じる駅前通りと静かで牧歌的な庭が、家によってくっ付いたり離れたり。街と庭の境界に垣のような透明性をもった建築を考えている。

湯浅良介

PROJECT NAME:Palace / LOCATION : Chigasaki,Kanagawa / SITE AREA : 340㎡
敷地は茅ヶ崎の住宅街。大小様々な家がひしめくエリアに、丸石の石垣と経年で風合いの増した木製天丸の門がある。門を抜けると広い庭と赤瓦の大きな家、小さな小屋に二匹の猫が迎えてくれる。増築を何度か行ったというその大きな家は今年の春には解体され、600㎡ほどある土地は半分ずつに分割される。今の家の記憶をコンテクストとしながら、スタジオを併設した二世帯住宅を設計している。

■出展者テキスト

「対話のもつ大らかさ」(アレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬 / KASA)
アトリエで2人で対話していると、ふとした言葉からヒントを得て火のように建築が立ち上がっていくような瞬間がある。言葉、スケッチ、模型、色んなことがきっかけで現れる、とても興奮に満ち溢れたそのひと時がとても好きだ。今回、畝森さん金野さんからお話をいただき「Dialogue」という言葉を聞いて、その光景を頭に浮かべていた。
湯浅さんと対話していく中で、そんな時間をご一緒できればとても素敵だなと思った。2組が同じ「家」という方向を向き、2つの「家」が対峙する、その間にぼくらは可能性を感じた。それは本展を企画するにあたって共に過ごした時間かも知らないし、互いのプロジェクトをエスキスした時に生まれたアイディアかも知れないし、会期中にみなさんからいただくご批評なのかも知れない。
一旦頭の中から飛び出して現実に立ち上がった瞬間からみんなの世界の一部になる建築の本来的な存在の開放性にぼくらはとても魅かれている。2人展にはそのような大らかさを感じている。

「違うこと、近いこと」(湯浅良介)
二人展には「Dialogue」(対話)というテーマが与えられていた。
人がそこにいられるようにするために空間という“何かと何かのあいだ”をつくることを生業にしているけれど、人と人とが対話をするためにも距離という“あいだ”が必要になる。そのことについて考えたいと思っていたところに展示の話をいただいた。対話をするために必要な距離、その見えない”あいだ”を開示する試みとして本展を考えたいと思う。
対話をするためには、共通の言語とツールで同じトピックについて話をすることが必要だと仮定した。交渉の場合は“テーブルにつく”という表現がとられることがあるが、僕らは対話をするために“形式を揃えた”。その上で実際にたくさん話をした。同じフォーマットを使いその上で話をすること。そこには、相手は自分とは異なる、という前提があり、それは相手に対する敬意の表れ、その敬意を“あいだ”と言ってもいい。
対話を行うと両者の“違い”がたくさん浮かび上がる。でも時折、その中に“近い”何かを感じることがある。異なることと似通うこと、KASAの二人との対話で感じるそれら無数の同異点を、対話の価値として開示したいと思う。

■主催者テキスト

「表現と批評の場をめざして」(金野千恵)
私たちの拠点 BASE にて、初めて建築家の方をお招きして行う展覧会ということもあり、どなたに打診するかの議論は難航し決定に時間を要しました。依頼の直後から、2組の建築家は丁寧に議論を重ねてくださり、展覧会オープンを迎えることができました。 KASA さんは、ヴェネチアビエンナーレの「ロシア館」で丁寧に歴史に向き合う姿勢を鮮やかに建築にドライブさせると共に魅力的なイラストで広く人に伝え、「小石川植物祭」では企画発案から取り組んで園と共催してその魅力を掘り起こすなど、多彩な スキルを活かして建築の可能性を切り開いています。湯浅さんは、線の描写から繰り出される平面的なアイディアや空間の断片 に独特の表現がありながら、「FLASH」などの実作に感じる建築化の際の立体的な展開が飛躍的であり、その線を起点とした 創造力の豊かさに、設計行為とは何かという建築家の拠り所を炙り出しています。 この2組のエネルギッシュな協働を、春の訪れと共にお届けできることを大変嬉しく思います。ごゆっくり鑑賞頂き、批評の お言葉を頂けますと幸いです。

 

「KASA と湯浅さんについて」(畝森泰行
KASA のふたりを知ったのは SD レビューの出展作である。蓮の葉をモチーフにした不定形な屋根が寺に置かれたそれは、 ずっと昔からあるようで、けれどこれまでにないインパクトをもっていた。またヴェネツィア・ビエンナーレ・ロシア館の丁寧 で爽快な改修や絵本の作成、小石川植物園の地域を巻き込む運動など彼らのアプローチは実にさまざまだ。異なる国籍のふたり が、自由にまた真っ直ぐに新しい建築を考えるその明るさに私は惹かれる。 一方の湯浅さんは何と言っても大磯町の住宅「FLASH」である。言葉では表現しづらい独特なヴォリュームや仕上げの選択、 異常なほどの2次元への拘りとスケッチのみで考えられたその白い住宅は、KASA とは真逆で徹底的に自らを制限して生まれ た。この不自由で盲目的なアプローチが彼自身の想像を広げ、また作品の奥行きを与えているのであり、その深く孤独な姿勢 に私は共感する。 今回、この対照的な彼らが進行中の住宅を共に展示する。差異が際立つのか、あるいは共通性が現れるのか興味深い。けれど 私には、彼らのアプローチがどう異なろうとも、全身で自分の建築像を探していることが理解できるし、何よりそのことが 同じ建築家として強く信頼できるのである。